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オーナーの想いを汲み、
企業の永続性を構築せよ。

自社株の大半を経営者自身が保有している、いわゆるオーナー企業。意思決定のスピードや、独自の経営哲学、それらによるブランド力など、ポジティブな側面が照射されることはよくある。だがひと度、その経営者が老いに直面すれば、一気に危うさとも隣り合わせになってしまう。それを回避するための視点は「法人」と「個人」の2つだ。そうした、株を巡る「未来のあり方」に挑んだのは、三井住友信託銀行の精鋭4部隊。プロジェクトの推移を、証券代行とプライベートバンキングの2名が振り返る。

活動から1年、提案から半年。
扉を開いたのは証券代行。

「このお客さまとの最初の1年間は、ビジネスというよりも関係構築の期間でした。私たちも商品やサービスの提案は一切せず、法人RMが中心となり、企業の事業拡大支援を目的として取引先のご紹介などに専念していました」。そう語るのは、現在法人トータルソリューション事業に在籍し、当時は証券代行事業に所属していた小田部慎吾だ。当時このお客さまへの対応で法人RM、証券代行、信託開発、プライベートバンキングといった、全社一丸となったチームが編成されるなどとは思ってもみなかったと小田部は言う。

「はじめに証券代行に白羽の矢が立ったのは、いずれお客さまが、株主構成や資本戦略といったオーナー企業特有の問題に直面することが必至だったからです。ただし、証券代行の受注に向けて勝負するとなれば、それなりにタフな闘いになることが予想できました」。上場企業は、株主名簿の管理を外部に委託する旨が法令などで定められている。だが、それを受託できるのは1社のみ。三井住友信託銀行が受託することになれば、当然、乗り換えが必要になる。「当社を選んでくださった理由は、信託銀行としての各機能を組み合わせて統合的な経営サポートができる点を評価いただけたから。先方は、自社株の大部分を経営者が保有していたため、『法人』『個人』両面からのサポートが不可欠だと私たちは考えました。そこで、法人トータルソリューション事業、証券代行に加えて、受託、プライベートバンキングなど、事業を横断したチームが結成されました」と小田部は解説する。つまり、証券代行の提案をした時点で、すでに社内の「その他」と連携させるプランがあったということだ。

証券代行の強みは、何よりもまず経営者との接点が築けるところにある。株主構成の話から資本戦略、将来の事業承継、オーナーの株式移転の話へ、と複合的な展開を描く際に、最終決裁者である経営者の意思を直に確認できることは大きい。そして、そうしたやり取りの中から、日頃は語るに語れない、オーナーの本音をも引き出すことができるのだ。

会社、従業員、社会のために。
株式活用に対するオーナーの想い。

まず一般論として、オーナー企業の経営者は、自社株の大半を保有している。その資産額が多ければ多いほど、いずれは高額な相続税となり、家族・親族の身に降りかかることになる。また、オーナーが健在であれば、株主総会での議決権は会社サイドに置くことができるが、もしオーナーが急逝して、その家族が相続税額捻出のために株式を手放せば、株主構成が変わり、企業としての安定感は損なわれかねない。このように、意思決定が集約されたオーナー企業には、強みと弱みが同時に内包されており、さらに「個人」「法人」それぞれの課題が、複雑に絡み合っているわけだ。

そうした事態を避けるために何らかの策を講じることが勧められるのだが、今回の場合、それとはまた別の考えがオーナーの胸中にあったという。「再三おっしゃっていたのは、会社のため、従業員のため、さらには社会のために、自分の資産を有効に使いたいということでした」。そうした想いを受けて、三井住友信託銀行では会社に対しては「信託スキーム」、個人に対しては「プライベートバンキング」と、大きく2つの体制で課題解決に挑むことにした。狙いは、企業の継続性、相続・事業承継対策、さらに経営者の理念を、並行して実現させていくことにある。

信託スキームについては、あらゆる国内事例をかき集め、オーナーだけでなく各担当役員にも説明した。「例えばオーナーが保有する株式を、信託スキームを利用して当社がオーナーに代わって売却することもあります。スキームについては、押し付けるのではなく先方に選んでいただくような、中立のスタンスを貫きました」。そうして絞られていったのが社会貢献のために公益法人に株式を寄付する「新しい寄付スキーム」、役員や従業員の処遇向上に株式を活用する「株式交付信託スキーム」だった。どちらもオーナー保有の株式から供出することで、将来のリスクをあらかじめ分散させられるほか、オーナーの想いにも応えられる。ただ、「寄付スキーム」は新しいスキームであった。それゆえに、「オーナーの想い、経営の理念にいかに応えていくか、そのための仕組みを信託開発の担当部署も一緒に考えて、商品設計をしてくれました」と小田部は語る。

これぞ三井住友信託銀行。
高度な機能がひとつになった瞬間。

オーナーに対し、より「個人」にフォーカスしてシミュレーションを行ったのがプライベートバンキング業務を行う内栫啓貴だ。「寄付スキームにせよ株式交付信託スキームにせよ、オーナー個人で株式を供出する以外に、実はもうひとつ手段があります。それは会社が保有する自己株式からの供出です。オーナー企業の場合、この2つをどういう比率で供出すれば会社にとって、またオーナーにとって合理的かが重要なポイントになりますが、最も重要なのはオーナーの希望に沿えるのか。そのためにシミュレーションを重ねました」。

企業経営者であり大株主という公的な立場と、あくまでも私的な立場。その両方が内在するオーナー。そして、オーナーが経営する会社。大局的に、そして複眼的に課題解決策を練り上げることができたのは、もちろん三井住友信託銀行にさまざまな事業があり、それぞれが高度な知識や経験を持っているからだろう。だが、それらが単発ではなく連帯した形で提供できるところにポイントがある。「複数の関係者が携わっていましたが、まったく違和感はありませんでした。数え切れないほどの会議をしましたが、横の連携はとても早かった。今後に向けても、二の手三の手をストックしてあります」と内栫は言う。

当たり前のことだが、本プロジェクトは決してスムーズな案件ではなかった。「寄付」に株式を供出することを、投資家にどう説明するのか、議論が噴出したこともある。また、オーナーと各役員の温度差が埋まるには、かなりの時間も要したという。だが、小田部は胸を張る。「信託銀行である当社は、高度な機能やハイレベルな人材、いろいろなものが入っている『器』のような存在。そして、その『器』で委託者の安心を担保する。この案件は、まさにその可能性を示した事例になっていると思います」。

MEMBER PROFILE

小田部 慎吾

証券代行の受託を皮切りに、お客さま企業の永続性を担保するため、将来に向け、オーナーの株式をいかにスムーズに移転していくか思案。ルーティンとして発生する株式事務の窓口として奔走しながら、並行してお客さまのために「信託スキーム」「プライベートバンキング」などの機能との連携強化を図った。

内栫 啓貴

企業オーナーなどに対して直接コンサルティングを行い、資産管理会社の活用や組織再編、不動産取引など広範なソリューションを提供するのが本来の役割だが、本プロジェクトではむしろ、証券代行や信託開発のサポート役に徹した。既定路線となっていたスキームに合わせる形で、株式移転方法をはじめとした相続・事業承継対策などを提案。